福岡・宗像地方から佐賀・唐津あたりにかけての地域の郷土料理。
たっぷりの根菜と里芋、麩、凍りこんにゃくなどが入ったとろみのある汁物で、「らぶ」と呼ばれることもある。※1
地域の人々には親しまれており、「だぶ椀」という専用の食器や「らぶ麩」という専用の麩がある程だとか。なにそれすごい。※2
名前の由来については諸説ある。
水の中に煮崩れしにくい具を入れて“ざぶざぶ”するところからだとか、汁が沢山ある様子から来ている、といった話が一般的。
この記事の写真は、私が古賀市のWebサイトに掲載されていたレシピや料理レシピサイトを参考に作ってみたものだが、里芋が大半溶けてしまった。
ざぶざぶし過ぎてしまったのか、はたまた下茹でし過ぎたのか、別の意味でだぶだぶな感じだ。
それと凍りこんにゃくと専用の麩は近所で見つからなかったので、普通のこんにゃくと玉麩を使っている。
というか専用の麩が東京の一般スーパーにそうそうあるとは思えないのでそこは仕方がないということでどうかひとつ。
おかわり推奨
昔から結婚式や節句、葬式など人の集まる場で、地域の住民が共同で作り振る舞われてきた料理だという。
そうした場でおかわりができる料理が出てくるというのは案外珍しいが、これについては寧ろ推奨のようで、場合によってはしきりに「おかわりは要らないか」と声を掛けられるらしい。
なんかやたら次々と食べ物を勧めてくる親戚のおばちゃんを思い出してしまう……。
冒頭で触れた「だぶ椀」もそれを見越してか、浅いつくりになっている。
めでたい席や故人を偲ぶ場などはどちらも、それぞれの意味で賑やかにすることが望まれることも多い。
積極的なおかわりはそうした食事の場の空気に合っているのかも知れない。
少し調べてみると、どうも野菜のいいところを使う料理(煮しめなど)に対して、「だぶ」はその残りの部分を上手く使う料理だという話もある。
平均的に「だぶ」では具は小さく切り刻まれるので、野菜の頭や尻尾の部分でも問題ないのだろう。
□と△の風習
この料理に入れる具材ついて面白い風習がある。
婚礼など祝い事の際には四角形に切り、葬式など愁い事の時には三角形に切るという決まり事があるのだとか。
何故なのかは定かではない。
これは飽くまでも私の勝手な推測だけれど、ひな祭りでの菱餅の四角形や、葬儀での死装束の天冠・額烏帽子の三角形と、由来を同じくするものではないか――と考えていた。
状況とそれぞれのシェイプが対応するという根拠だが、まあ想像の域である。あまりここで深く掘り下げてもいられないので、追々調べてみたい。
他にも幾つか、“慶事の場合は鶏肉や魚の練り物なども入れるが仏事・弔事ではこれらを用いない”、“祝いの場合は具材を奇数にする”、といった区別が見られる。
だぶは今
汁気の無い「煮だぶ」と呼ばれるものもあり、上述したような汁物は「すいだぶ」と称して区別されることがある。
現在は「だぶ」とだけ言うと「すいだぶ」形式のほうを指すことが多いようだ。
もとは慶弔時に食べられてきた料理だが、現在は日常的にも食べられている。
しかし他の郷土料理でもよく見られるように、残念ながら伝統的な食文化としては廃れてきている面も強いという。
人が集まるシーンに家庭でこうした料理を用意するのは手間もかかる。他の様々な料理や配達など選択肢が増えており、またそもそも家に集まることのできる場が無いことも多い現代においては、仕方ない点もあろう。
各地にハレの日の行事や人の集まる場での食文化は存在しているが、私は東北地方の芋煮会を連想した。
あれは今でも…というか今や、重機で大鍋をかき混ぜるような大規模な賑わいを見せているイベントもあるが。
また近年、薄味が基本である「だぶ」は、健康に良い点やダイエットに適する点などに着目されている。
栄養価の面から、冬場の風邪予防などにも良いという話も強い。
変化する生活の中で、形を変えつつも何かしら残っていって欲しいものだ。
因みに
さて、長くなってしまったが、最後に少し脱線した話……というか半分は個人的なメモを。
最初の記事執筆を仰せつかったので、テーマはこのWebサイトの名前『だストレージ』から“だ”で始まる言葉にしようと、夜中に候補のリストから頭文字が“だ”の言葉を眺めていたのだが、その中でこれを選んだのは、部屋が恐ろしく寒かったからだ。
本格的に冬を迎えて急激な冷え込みとなった日、流石に暖房をかけようと思ったらエアコンがどうも故障していたらしく、ただ風を送るだけの哀しい箱に成り下がっていたのだ……。
まさに温かい汁物が恋しい心境であった。
だぶ、食べたい。
ということで自分で作ってみたのだが、それでも美味しかった。材料の準備さえしてしまえばあとは簡単なので、気になった方は是非作って食べてみて欲しい。