アフリカがルーツの民族楽器。
箱に細い金属の細い板や棒を並べて固定し、それを指で弾くことで演奏する。
箱の代わりに板やココナッツや瓢箪の殻、焼き物などを用いたり、取り付ける棒が植物だったりすることもある。
何と呼んでも
アフリカ各地で様々な大きさ・形状のものが存在し、鍵盤の数なども全く異なる。
呼称もそれぞれ違い無数に存在するのだが、総称としては「ラメラフォーン」と言うのが正確らしい。
……初めて目にする言葉って意味では、このラメラフォーンのほうをテーマにしても良かったのではと思うが。
総称に近い名称としては「親指ピアノ(サムピアノ)」や「アフリカンピアノ」「ハンドオルゴール」といったものも存在するが、現在一般には「カリンバ」と言うのが通りが良いだろう。
こう言われればピンと来る人が急に増えるのではなかろうか。
カリンバは元々はタンザニアあたりでの呼び方だが、普及の過程で商品名として世界中に広がったため知名度が抜群なのだ。
今回上げた「ンビラ(mbira)」はジンバブエ周辺での名称になる。カタカナで表記では「ムビラ」とも書かれる。
ショナ族という一族に古くから伝わってきたもので、鍵盤の数が24本のものがメジャーだとか。
彷徨うオルゴール
この楽器、オルゴールの原型であると言われている。
形や仕組みもさることながら、実際に音を聴くと成る程、と思い至る。
是非サンプルのあるものや、演奏者の動画などで聴いてみて欲しい。
滑らかに演奏されていると、オルゴールに似ているのはよく解る。
そう考えると、どんどん姿を変えつつ今や世界中に繁栄していると言えなくもない。結構な勢力だ。
一方、もとの姿に近いまま留まっている楽器にもバリエーションはある。
金属の板や飲み物の蓋、貝殻などを追加で取り付けたンビラも存在するのだ。
これらを現地では「ペケシェン」と呼ぶのだそうだが、興味深いのはこれに関して英語の「パーカッション(percussion)」が由来になっているという点だ。
歴史的な事からなのか、世界中に普及してから逆輸入のような形になったのかは判らないが、こうした言語の混じり方は面白い。
響く容積
アコースティックギターなどと同じ理屈で、音を大きくする目的で箱が使われていることが多いわけだが、それでもボリュームある音が出る楽器ではない。
そのため、更に増幅器となる大きな容器などを取り付けていることがある。
勿論、現在はマイクを通してデジタル処理で増幅することができるが、環境がいつも揃うでもなし、こうした原始的な方法は案外生き残るものだ。
と、昔池袋の近くに住んでいた頃に、線路をくぐる連絡通路でこれを演奏している人を何度か見かけていたのを思い出した。
あれは雨風を避ける意味もあったのだろうけど、何より音をトンネル内に反響させて大きくする狙いだったんだろうなと考えていた。
周辺環境を上手く活かした路上パフォーマンスである。
少なくともあの時あの通路の中は、狭さに反して壮大なものが満ちていたのかも知れない。
アフリカで生まれた楽器が今あちこちの街で音色を響かせているのはなんだか、人類の移動ルートを見るようだと思い返す。
妙にしんみりするのはこの楽器が生まれた地で元々持っていた役割とは、恐らく違うけれど。