あまりに特徴的な車輌の見た目で「鉄人28号」の愛称を持つ、関西を走る特急列車。
南海電鉄(南海電気鉄道)が難波駅‐関西空港駅間で運行している。
名前はドイツ語の”rapid”に由来する。「急速な」を意味する言葉で、綴りが一見同じだが英語とは発音が異なる。
6両編成で全席が禁煙の指定席で、うち2両が「スーパーシート」と呼ばれる特別席だ。
古き“近未来的”ロマン
デザインコンセプトが「レトロフューチャー」というだけあってSFじみた風貌である。
全体が深い青色で、まさに『鉄人28号』を彷彿とさせる。
全体的に無骨な印象の中に、球体が埋め込まれたそれこそロボットを思わせる鉄の兜のような運転席、潜水艦のように並ぶ丸い窓。
航空機のイメージや都市計画に関わる景観への配慮などがデザイン面での設計に盛り込まれてるという。
コンセプトに違わぬ“かつて人々が憧れた近未来”的な雰囲気を感じずにはいられない。
また、これまでに企画で幾つかの特殊なカラーが登場しているが、『機動戦士ガンダムUC』のネオ・ジオン仕様の赤い車体や、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』仕様の黒い車体など、やはり元のコンセプトに近い作品とのコラボレーションが並ぶ。
形状は変わっていない筈なのに、それぞれの作品に登場する機体や人物をモチーフにしているように感じられてくるから不思議なものだ。
そうした良い意味で汎用的なカッコよさを確保する点も魅力の一助なのかもしれない。
関空戦士ラピートルジャー
南海電鉄の関西空港駅には、このラピートをモデルとした『関空戦士ラピートルジャー』というイメージキャラクターも存在する。※1
所謂、変身するスーパーヒーローのようなキャラクターだが、ラピートの先頭車両を模した頭部はもはやただのヘルメットのようでもあり、何とも言えない。
いや、逆か……電車の方がヘルメットっぽいのだ元々……。
インバウンドの、つまりは海外からの訪問客に向けた宣伝の役目から生まれており、この特急列車に親しみを持ってもらうのに一役買っている。
彼の誕生の経緯がまた現代的なのだ。
実はラピートはお隣、韓国の観光客からの関心がとりわけ高い。
先に上げた『機動戦士ガンダムUC』とのコラボが話題となり、韓国の鉄道マニアたち※2が車輌を絶賛するコメントをインターネット上で書き込み、公開した。
これに端を発し、現在韓国では鉄道好きの人のみならず広く人気を博している。
見た目だけではなく実際に乗車しての快適性も好評を加えてきた。
現在はもはや「乗客の大半がアジア諸国からの観光客だ」という声もある。
その影響で例によってマナー問題なども多発しているわけだが……。
ともあれ、そうした人気がそれこそ“急速に”伸びたことを受けての、ラピートルジャーの登場だったというわけだ。
このほかにもインバウンドの事業部を新設、海外観光客向けのサービスを強化するなど、同社はかなり力を入れているようで、実際に乗車人数アップなどの実績に繋がっている。
戦いの行方
ラピートはルート的に、先に運行していたJR西日本の特急「はるか」に挑む形で登場したものだ。
当初は勢いがあったものの、その後暫くは利便性などから利用者を大きく減らし差がついていた。
近年のLCCによる関西空港の利用者数の増加や、先述の韓国での人気などの追い風を受けて、速いタイプの列車が多く走るようダイヤも改正。
料金が「はるか」より割安なことも手伝ってか、ここ数年で業績を取り戻しつつあるという。
“鉄人”は外からのエネルギーを得て再び力をつけ、変化する商業都市を駆けている。