道路や線路が急勾配を超えるため急カーブを繰り返し、上空からあるいは地図上で見たときギリシャ文字の大文字の「Ω」のように見える区間のことをこう呼ぶ。
特に三重・奈良に走る名阪国道の天理東IC~福住IC間を指す固有名詞としても用いられる。※1
記事のイラストは勿論イメージだ。実際はこんなにも明確にΩではないし平坦でもない。
元祖Ωの魔
名阪国道は、自動車専用道路にも関わらず一部の区間を除き最高速度制限が60km/hという低い数値だ。かつては50km/hだったという。
もうそれただの道路と大差無えじゃん!というツッコミすら入る。
その制限の一因となっているのがこのΩカーブの存在である。
この区間ではΩカーブが大小連なっているような形になっているのだが、カーブの最小半径は150mであり、これは先述の速度制限内における道路敷設の基準ギリッギリの値だ。
しかも坂が急な箇所が連続するので、まあ事故が多発する。スリップや接触、転落事故などが結構な頻度で発生している。
特に下りでは顕著だが、これは「そりゃそうだろう……」という感想が出てくる。
一方で、そもそも交通量が多いことも相まって自然と走行速度が落ちるため、渋滞の名所としての悪名も高い。
勿論これを解消する策も実行されてはいる。
並行する名神高速道路では、このエリアの急勾配&急カーブを避けるために「今須トンネル」が通されているのだ。
が、名阪国道ルートの方が通行料金が安いことから、みんなしてこっちを通るもんで、このΩカーブの交通量は依然多いままであるという。
結局それなりの速度のままカーブに差し掛かる車も多いらしいが、くれぐれもスピードと車間距離に注意の上で走行して頂きたいところだ。
当然、なぜ最初から名阪国道もトンネルにしなかったのかという疑問が浮かぶ。
開通当時はちょうど高度経済成長期であり、車社会が急速に拡大、急ぎ建設する必要があったため工期の面からトンネルを通すのが難しかった、というのが理由である。
当時は「千日道路」なんて揶揄されることもしばしばだったらしい。
突貫工事のツケが出ているというわけだ。
考えてみれば河川などでも、同じようにカーブの急な所は水害が多発する地点であることが多い。
どんな分野でもこの手の話は耳にするものである……。
「抵抗」を感じて
名阪国道以外にも何ヵ所かΩカーブと呼ばれる場所がある。
鉄道では北海道にあるJR石勝線や愛知・長野を走るJR飯田線にあるものが有名だ。
車同様、事故防止のため速度を落として運転することになるため、車窓からゆっくりと景色を楽しむことができるという観光客へのアピールも行われている。
デメリットを活かす逆転の発想である。
他にもJR飯田線ではΩカーブにまつわる面白い話がある。
この路線に幾つかあるΩカーブのうちの1つ、下山村駅~伊那上郷駅間では、地元で「下山ダッシュ」と呼ばれるチャレンジが存在している。
これは『電車がΩカーブを曲がり切るまでの間にショートカットコースを人が走って競争する』というものだ。
飯田線の電車が約6kmをゆっくり大きな弧を描いて移動する間に、人間が約2kmをほぼ直線距離で競走し勝利できるか? ということになるのだが、“ダッシュ”と呼ばれる通り、結構な速度で走らないと勝つことはできない。
しかも当然、ここを直線移動するということは急勾配に挑むということにもある。
何故線路がΩ状になっているのか、傾斜の抵抗を噛み締めながら体感できそうだ……。
これを試している人のブログ記事などもあるので見てみると面白い。
【飯田に伝わる「下山ダッシュ」で電車の追い抜きに挑戦してみた】 | 信州若者1000人会議 BLOG
休日ダイヤだと割と勝ちやすいらしいw
とはいえ安全と体力によくよく配慮して行わねばならなそうである。
そういえば、関係ないが電気抵抗の単位「オーム」もΩと書く。
山や谷など、交通における“抵抗”とも考えられる場所を乗り越える道が、Ωカーブと呼ばれているのが何だか不思議な共通のようで面白い。