“Geo Graham”は天体をモチーフにした超高級腕時計のシリーズ名。
モデルによっては価格が30万ドルを超えるものもある。
浪漫と精巧
発表されて3,4年ほど前から時折インターネット上でも話題になるので、写真や名前を目にしたことがある人も多いかもしれない。
ページ下部の『リンク・参考』から是非メーカーWebサイトや記事などを、今一度見てみて欲しい。
兎に角もう問答無用のカッコ良さである。
品の良い高級感とレトロな風合い、それでいてどことなく漂う新しい印象。
宇宙や天体にロマンを感じる人は言うまでもなく、スチームパンクやある種のSFなんかが好きな人の琴線も、びんびん揺らされるのではなかろうか。
コンセプトを突き詰め、表も中身も研ぎ澄まされていると言えよう。
モチーフは太陽系の軌道や月と星座など色々なものがあるが、いずれもデザイン性が高いばかりでなく機能面においても一級品。
地球や月・火星の運行が表示されるモデルなどは軌道の自動修正機能を備えており、専門の時計技師による調整は300年の間不要であると言うから驚きだ。
勿論使いかたや環境次第で調整の具合は変わってくるのだろうけど。
“グラハム”の名
そもそも「グラハム(Graham)」は1995年から発表されている高級時計のブランドだが、これは史上初のクロノグラフ※1を発明した著名な時計師「ジョージ・グラハム」の名を冠したものだ。
17世紀から18世紀にかけてイギリスで活躍した人物であり、時計に関連するものだけでも発明や貢献は枚挙に暇がない。
彼は同時に発明家としても知られ、天頂儀や近代的な太陽系儀※2を開発している。
「ジオ・グラハム」は特にこの天文にまつわる功績を讃える意図をもって企画・製造されたという。
開発元である「ザ・ブリティッシュ・マスターズ」社は、第二次世界大戦時に英空軍パイロットが使いやすいよう操作系が巨大に設計された時計をモチーフにしたシリーズ「クロノファイター」が有名だが、ほかにイギリスの歴史的時計師の名前をもつ腕時計なども製造している。「グラハム」もそのひとつだ。
歴史を巻いて
ザ・ブリティッシュ・マスターズ社の本拠地はスイスにある。
今でこそ高級時計と言えば矢張りスイスのイメージが強いが、歴史上、近代の時計の発展に最も貢献してきたのはイギリスだと言える。
時間の基準であるグリニッジ天文台の存在などからもそれは窺えるだろう。
大航海時代の海難事故に頭を悩ませていた英国が、緯度経度の測定や時間の精密計測の研究に国を挙げて取り組んだことから、急速に時計や天体観測の技術が発展したのだ。
お蔭でジョージ・グラハムを含む多くの優れた時計師が輩出された。
このあたりは天文関連の情報と合わせてみると面白かったので、興味があれば調べてみて欲しい。
「ジオ・グラハム」の回転はそうした歴史への敬意も乗せているわけだ。
因みに先述の太陽系の軌道をモチーフにしたモデルは1点しか製造されておらず、現在はザ・ブリティッシュ・マスターズ社の創設者の腕に収まっている。
そうでなくともおよそ私には手の伸びる未来すら想像も付かない高級品だが、自身の腕に時間のみならず宇宙や歴史も巻きつけるのだと考えると壮大である。
まあ仮に自分が身に着けるとしても値段と恐縮さで、思いを馳せるどころではなくなりそうだ。
こう……色々な意味で……大き過ぎる……。