だストレージ
いつもの会話にもう一品。
余剰知識の見本市。

冬珊瑚 フユサンゴ

  • 農業・園芸
  • 植物

小ぶりのミニトマトのような実をつけるナス科の植物。ただし有毒。
色鮮やかな果実ができるので、花よりも実を鑑賞する園芸品種である。

カラフル・オーナメント

園芸品種全般に言えるが、別名が多い。
冬珊瑚(フユサンゴ)のほか、玉珊瑚(タマサンゴ)、龍の珠(リュウノタマ)、玉柳(タマヤナギ)、また英語読みそのままでクリスマスチェリー、エルサレムチェリー、など。

果実は緑色⇒黄色⇒濃い橙色~赤色と変化するのだが、夏から冬にかけて長く実をつけるのでこれらの色が混在し、とてもカラフルである。

英名はこの実がクリスマスツリーの飾りのようであることから付いたものだという。
白色から赤へと変化する品種や、斑模様の入るものもある。

比較的丈夫で育てやすく、上記の通り色鮮やかで目に賑やかなので、庭木や切り花として人気が高い。
日本の都市部でも、住宅の庭先や街路のプランターなどでよく見かけることができる。

果実はミニトマトや鬼灯の実によく似ており、一見美味しそうだが毒があるので食べることはできない。
子供が誤って食べてしまう危険性があるので、置く場所や扱いには注意が必要だ。

似た道と非なる危険

ブラジル原産と言われるが、アジアやアフリカの熱帯地域原産であるという説もある。
日本には明治のころに輸入されたとか。

そう言えばトマトも江戸時代に日本に紹介され、明治になるまでは観賞用だったという歴史がある。
そもそもアンデス地方の人たちが昔から育てていた他は、それを持ち帰ったものが広まったヨーロッパでも18世紀に入るまで食用にはなっていなかった。

同じナス科ナス属※1であることや、トマトの方は人体に影響は無い程度の微量だが毒を持つことも共通している。
見た目以上に近い品種なのかも知れない。

ナス属(ソラナム属とも言う)を示す「Solanum」は、古いラテン語の「solamen=安静」が語源だ。
この属の植物に鎮痛作用を持つ種が存在することに因るという。

名前通りに珊瑚のような美しさだが、薔薇に棘ありといったところか。(ややこしい例えをするな)
有無/強弱はあれど、なんかナス科の植物はやはり毒や薬に関わるものが多いんだな……と改めて認識した。

「これは美味しくいただけるようになってて良かったなあ……」と噛み締めながらトマトのほうを食べていきたい。

  • ※1: かつて長らくトマト属として独自の属にあったが、90年代に入ってから系統分析が改められ、ナス属とされている。
  • TEXTS by

    Yuri Yorozuna
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