うぐぅ(うるせえ)
まあそんな某懐かしのゲーム・アニメのキャラの口癖的な台詞を思い出すのも仕方ないのだが、全く関係ない。
ちょっと息の詰まるような発音のこの「迂愚(うぐ)」とは、物事に疎いことや愚かなことを意味する言葉である。
正直あまり良い言葉でないのは、調べる前より既に字面から漂っていたのだが……。
物事に疎く愚かなこと。愚鈍なこと。また、そのさま。
※出典:goo国語辞書 デジタル大辞泉|大辞泉|小学館
PCやスマートフォンでは、インストールされている辞書等に依存するだろうが文字変換で候補に出てこないこともある。
普段そうそう見かける熟語ではないが、夏目漱石や太宰治などひと昔前の小説やなんかではちょこちょこ使われている。
ルビで「のろま」と振られていることも。
うかつコントラスト
さて「愚」のほうはさておき「迂」という字は、日頃ではせいぜい「迂回路」とかでしか見かけない……それにしたって近年では「う回路」なんてハンパな表記が蔓延っているので尚のこと目にする機会の少ない漢字だな、と思っていた。
が、これを書いた直後に、ああ「迂闊」の“迂”か! と思い至った。まさに迂闊である。
これもそこまで多く接する言葉でもないが。
改めて「迂」という漢字の意味を調べてみると、やはり “遠回りすること” だとか “物事に疎い” といった説明が並ぶ。この文字だけでもそうした意味があるのだ。
つまり「迂愚」は類義の漢字を重ねて強調するタイプの熟語である。「表現」とか「重複」とか「曖昧模糊」とかそうした言葉と同じだ。
画面表示上では「迂」の「しんにょう」の点が1つのパターンになっていることが多いかもしれない。
このページでもWebフォントを適用している見出し部分は二点しんにょうだが、本文部分は一点しんにょうになっているのではないだろうか。
まあこれはどちらでも良いとされるケースがあるし、話が逸れるので機会があれば改めて。
似たもの同士
そう言えば「紆余曲折」の“紆”は似てるけど違うのか? 意味近い気がするけど……と思って調べてみたら、やはりどちらの漢字も使われていることが判った。
「迂曲/紆曲(うきょく)」という熟語もありこちらも同様だ。
似た漢字がほぼ同じ意味を有していることはよくある話である。そうでないのもあるので注意が必要だが。
そしてこの四字熟語も近い言葉を重ねて強調しているものだ。
へりくだるう。
もう一つ、「迂」という字には下記の意味もあることを知った。
自分を謙遜していうときに冠する語。「迂生」
※出典:goo国語辞書 デジタル大辞泉|大辞泉|小学館
よく文面などで昔の男性が使っていた「小生」と同じ使い方で「迂生(うせい)」という言葉があるのだ。
年配男性が書くものとして近い表現に「迂叟(うそう)」という言葉もあった。「叟」は老人という意の文字だ。
自分や身内をへりくだって「愚息」とか「愚僧」のように用いるケースと同じとも言える。
更に「迂言(うげん)」という言葉もあったのでこれも紹介しておこう。
1 時世や事情に疎い見当外れの言葉。自分の言葉を謙遜していうのにも用いる。
2 回りくどい言葉。
※出典:goo国語辞書 デジタル大辞泉|大辞泉|小学館
うん、私にとっては耳が痛い…w
捏ねるように
そしてこの迂愚とほぼ同じ意味で「迂」のつく熟語には、他にも「迂腐(うふ)」や「迂拙(うせつ)」「迂鈍(うどん)」といった言葉がある。
うどん……。
特に現代においては、これらを使うケースは稀だろうとは思う。
しかしそれこそ饂飩作りに喩えてダジャレるわけではないが、語彙の糧として頭に練り込んでおこうとは思った。
やや古い本や記事を楽しむ場合や資料として読む際に、意味を理解せずうっかりスルーしたままでいるようでは愚かさの一端であり、なにより勿体無いからだ。
迂愚ぅ。